研究課題
同種造血幹細胞移植はドナー細胞と宿主間の複雑な免疫応答による移植片対宿主反応(GVHD)、移植片対白血病細胞効果(GVL)やドナー造血幹細胞からの免疫系の再生など、複数のドナー細胞のサブセット(T細胞、造血幹細胞など)と宿主との相互作用によって病態形成、抗腫瘍効果あるいは免疫系の再構築が起きてくる。同種造血幹細胞移植後の複数のドナー細胞のサブセットの動態を解析するには蛍光イメージングは有用な手法である。しかしながら深部の観察に適さず、観察には侵襲を伴うことから経時的に観察には不適切である。申請者は非侵襲性のマルチカラー生体内蛍光イメージングによるドナー細胞の新しい解析法の開発が目的である。GVHDの標的臓器の一つである皮膚、特に耳介に着目し、ドナー細胞の動態を非侵襲的に観察および浸潤を定量的に評価できる蛍光イメージングの手技を確立し、GVHDに対する薬剤のスクリーニング法として有用であることを明らかとしてきた。生体内蛍光イメージング法を用いて、耳介に単純刺激物質、クロトンオイルの塗布がドナー細胞の浸潤が促進することを明らかとした。ドナー細胞のサブセットの同定あるいは宿主との相互作用の解析には、従来の免疫組織化学的な解析と組みあわせることにより、クロトンオイルの処置によってGr1^+細胞の浸潤、それにひき続きT細胞が浸潤することを明らかとした(Immuol Letter, 144: 33-40, 2012)。またマルチカラーでの非侵襲性の蛍光イメージングによる動態を解析する為に、DsRed-Tgマウスをドナーとして用いた場合においても、ドナー細胞を観察できることを明らかとした。今後、GFP-Tgマウスと組み合わせて2種類のドナー細胞の動態を解析する計画である。
3: やや遅れている
平成23年度は、特にこれまでの実績を国際雑誌に報告することに重点がおかれた。これまで、マウスの耳介を観察することによって非侵襲性にドナー細胞の浸潤の程度の定量化および単一細胞レベルの観察の利点を活かし、非侵襲性のイメージングによるGVHDに対する薬剤のスクリーニングモデルとしての有効性に関しての報告した(業績参照)。しかしながら、目的の一つであるマルチカラー解析についてはDsRed-Tgマウスをドナーとして、非侵襲性に観察が可能であることにとどまっていたことから、順調に進展しているとは言い難い。
非侵襲性の生体内蛍光イメージングによる同種造血幹細胞移植後のドナー細胞の解析については国際雑誌に報告できた。これらの方法を使って、当初の目的の一つであるマルチカラーによる非侵襲性の生体内蛍光イメージングの開発を引き続きする方針である。ドナーとして、GFP-Tgマウスに加え、現在飼育維持しているDsRed-Tgマウスを用いて解析を行う方針である。また、蛍光抗体による免疫担当細胞のイメージングについても、耳介局所等に抗体を投与するなど、実験手技に工夫を加えて解析する方針である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
Immunology Letters
巻: 144 ページ: 33-40
10.1016/j.imlet.2012.03.004
Gene Therapy
巻: 19 ページ: 34-48
10.1038/gt.2011.73
1http://www.ncc.go.jp/jp/nccri/index.htm