ファブリー病は、α-ガラクトシダーゼA(GLA)欠損症であり、酵素補充療法が実施されている。ファブリー病患者では、補充した酵素に対して免疫寛容がないためにアレルギー反応を起こしやすい。我々は、この問題を克服するためにGLAと構造が類似したN-アセチルガラクトミニダーゼ(NAGA)を鋳型にし、2アミノ酸を置換してGLA活性を持つ改変型NAGAを作製した。本酵素は、ファブリー病患者のアレルギー反応の軽減が期待できる。しかし、本酵素をマウスに投与するとアレルギー反応を生じる。本酵素を用いた酵素補充療法を実現するために、ヒトNAGA遺伝子を肝臓特異的に発現させて免疫寛容を獲得したファブリー病マウス(寛容ファブリー病マウス)を作製し、本酵素による酵素補充療法の有効性を検討し、さらに寛容ファブリー病マウスから抑制性T細胞(Treg)を単離し、ファブリー病マウスに移入することにより、本酵素に対する免疫寛容を獲得できるかを検討する。本年度は、寛容ファブリー病マウスを作製する目的で、肝臓特異的に発現するマウスアルブミンプロモーターの下流にヒトNAGA遺伝子を連結したコンストラクト作製し、ファブリー病マウスの受精卵に注入し、トランスジェニックマウス13系統を樹立した。 その寛容ファブリー病マウスが本酵素に対して免疫寛容を獲得できたかを検討するために、本酵素を週2回で投与したところ、ファブリー病マウスは6回目投与で本酵素に対するに対する抗体価が上昇したが、寛容ファブリー病マウスは抗体価の上昇は見られなかった。更に、ファブリー病マウスはアナフィラキシーによりほとんどが死亡したのに対し、寛容ファブリー病マウスではすべて生存した。これらの結果から免疫寛容ファブリーマウスは、本酵素に対して免疫寛容を獲得したと考えられる。今後、獲得した免疫寛容がTreg細胞によるものかついて検討する。
|