研究概要 |
改変型NAGAは、新しいコンセプトに基づくファブリー病治療薬として可能性を秘めている。しかし、ファブリー病モデルマウスを用いた静脈投与を行うと、強いアナフィラキシーを引き起し、治療効果を検討することが困難であった。そこで、肝細胞の強力な免疫寛容に注目し、肝細胞特異的にヒトNAGA遺伝子を発現させたファブリー病モデルトランスジェニックマウスを作製した。これらのマウスを用いて、改変型NAGAの免疫学的検討を行った。 改変型NAGAで免疫した野生型マウスの脾細胞培養では、抗原刺激を加えるとリンパ球が増殖し、培養上清からTh2サイトカイン(IL-4, IL-13)が分泌され、Th2への分化が示唆された。さらに、抗原特異的IgG1抗体が著しく高値であることが判明した。一方、改変型NAGAで免疫したファブリー病モデルトランスジェニックマウスの脾細胞培養では、抗原刺激を加えても、リンパ球は増殖せず、Th2サイトカインの分泌も検出されなかった。さらに、血液中の抗原特異的IgG1抗体も検出されないことから、ファブリー病モデルトランスジェニックマウスでは、肝細胞がヒトNAGAタンパク質を発現することで何らかの機序によりTh2分化およびIgG1クラススイッチを抑制していることが示唆された。 本研究では、改変型NAGA投与による抗原特異的IgG1抗体が誘導されるとアナフィラキシーが起こることは明らかとなったが、そのメカニズムについては不明な点が多く残った。さらに、肝細胞により抗原タンパク質を発現させることによる免疫寛容について、全く分かっていない。今後は、まだ解明されないこれらの点について研究を進行させる。
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