研究課題
悪性中皮腫においてNF2→Hippo経路の不活化が高頻度にみられ、腫瘍形成に関与していることを明らかにしてきた。がん遺伝子である転写のコアクチベーターYes-associated protein (YAP)はHippo経路によりその活性が抑制的に制御されており、中皮腫においてはHippo経路の不活化により恒常的に活性化し、様々な標的遺伝子の発現を誘導し、細胞の増殖を促進するものと考えられる。中皮腫においてYAPが制御する遺伝子群を明らかにするために、Hippo経路に異常を有する中皮腫細胞株においてYAPをノックダウンし、mRNAを抽出し発現プロファイルを行った。ノックダウンによりコントロール細胞と比較して、3つの細胞株で共通して半分以下に発現が低下する228遺伝子を同定した。遺伝子オントロジー解析では細胞周期の制御、またパスウェイ解析ではRB/E2F, FOXM経路との強い関連が示された。RB/E2F経路に関する遺伝子としてCCND1、FOXM経路に関する遺伝子としてFOXM1に注目してYAPにより発現が直接制御されるかどうかを、クロマチン免疫沈降法、レポーターアッセイにより解析した。YAP は転写因子TEAD結合部位を含むCCND1、FOXM1のプロモーター領域に結合し、レポーターアッセイではTEADとの協調的な転写活性の上昇を示した。以上よりこれらの遺伝子はYAPの直接の標的遺伝子と考えられ、その発現には転写因子であるTEADが関与している可能性が示唆された。CCND1、FOXM1の個々のノックダウンでは細胞増殖の低下が観察されるものの、YAPのノックダウンと比較して効果は弱かった。YAPはCCND1、FOXM1など細胞周期の進行に重要な遺伝子群の発現を促進することで細胞の増殖に働くことが明らかになり、YAPを分子標的にした治療法の開発が有用である可能性が示唆された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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