研究概要 |
腸管奇生原虫クリプトスポリジウムは、水道水を介したアウトブレイクの原因となる他、日和見感染においては時に誌の原因ともなるが、現在まで、免疫不全に合併したクリプトスポリジウム症を治癒する治療法は知られていない。そこで本研究では、ゲノムデータによって明らかになったクリプトスポリジウムの含硫アミノ酸および核酸代謝をターゲットとして、クリプトスポリジウム症の治療に利用可能な新薬の開発を目指す。これまでの研究では、アデノシンアナログの一部に抗クリプトスポリジウム作用を見いだし、その作用機序をS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素に対する効果を基準として解析してきたが、さらに今年度は、臨床に新たな治療法を提供することを念頭に、既に使用されている抗がん剤の中で、特にアデノシン類似化合物に注目し、抗クリプトスポリジウム作用のスクリーニングを実施した。 抗がん剤cladribine, clofarabine, cytarabine, gemcitabineのクリプトスポリジウムの増殖に対するEC_<50>は、それぞれ5.44μM,0.585μM,3.17μM,and 1.07μMと、唯一の承認薬であるニタゾキサニドEC_<50>=50.2μMを超える効果を示した。一方、pentostatinおよびara-Gでは有意な効果を認めるなかった。 以上の結果は、既存関連薬剤を用いたクリプトスポリジウム症治療のためのトライアルが効果を上げる可能性があることを示唆しており、特に、上記の薬剤と、ニタゾキサニドやパロモマイシンなどの従来使用されてきた抗クリプトスポリジウム薬によるコンビネーションには、効果をあげる可能性があると考えられた。
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