初年度に確立したリアルタイムPCRを用いたクリプトスポリジウムの培養細胞内における増殖定量評価法を用いた感染・増殖阻害スクリーニングを、今年度も継続的に実施した。成果の概要は以下の通り。今年度は、主に卵黄抗体(鶏卵抗体)のクリプトスポリジウム感染阻止効果についてスクリーニングを実施した。 (1) クリプトスポリジウムP15組換えタンパク質により作成した抗P15 IgY抗体を10mg/ml濃度で使用した場合、培養系において約38%のスポロゾイトの侵入阻止を見ることが判明。 (2) P23 IgY抗体を同濃度で使用した場合には、約76%の侵入阻止効果を認めた。 (3) 同濃度のP15およびP23 IgY抗体をコンビネーションで使用すると約87%の侵入阻止効果を認めた。 (4) 局所において卵黄抗体のこれほどの高濃度を生体内で維持することは、現実に使用する場合には問題となりうるが、スポロゾイトの侵入前に抗スポロゾイト抗体が実際に感染を阻止しうる可能性を明らかにすることができた。 本研究で確立したクリプトスポリジウムの細胞侵入効率および侵入後の増殖レベルの定量的評価法は、クリプトスポリジウム治療法の確立を目指した研究に極めて有用であり、幅広いプロトコルに応用可能である。
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