アフリカトリパノソーマ原虫の「動き」能力は原虫のライフサイクルの進行、増殖に必須であり、従って、その病原性にも密接に関連すると考えられる。この着想によりアフリカトリパノソーマ原虫ゲノムと線虫ゲノムとの比較で見いだしたTbUNC119分子は、その結合分子Tb119BP(binding protein)を共にノックダウンすると、トリパノソーマ原虫細胞に「動き」の減少、形態異常、増殖停止(アポトシス)を起こすことが明らかになった。そこで本年度は、これら両分子のトリパノソーマ原虫細胞の「動き」における役割を詳細に解析することを目的として、Yeast Two Hybrid解析で明らかになったプロリンリッチの相互作用部分のみをアフリカトリパノソーマ原虫細胞で強制発現を行った。その結果、強制発現細胞において、特段の表現型の変化は見られなかった。相互作用ペプチドはRNAレベルでの発現上昇が確認されたが、タンパク質レベルの発現上昇は確認されなかった。その理由としては、蛍光タンパクのみを強制発現したものでも、同様にタンパクレベルでの発現が見られなかったので、タンパク質への翻訳がうまく行われていないと推察された。そこで発現システムの検討を行い、IRES配列を導入したベクターの構築を行い、これを用いての強制発現系の構築に着手した。また、合成ペプチドの作製を行い、細胞へのペプチド導入の系の作製を行った。あわせて、TbUNC119BP分子の細胞内局在を解析するために、大腸菌でリコンビナントTbUNC119BPを発現、精製し、これを用いて本分子に対する抗体の作製を行った。
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