研究課題/領域番号 |
22590386
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
長田 良雄 産業医科大学, 医学部, 准教授 (80282515)
|
研究分担者 |
黒田 悦史 産業医科大学, 医学部, 講師 (10299604)
|
キーワード | 感染症 / 炎症 / 免疫修飾 / 寄生虫 / 自己免疫疾患 / 関節炎 / サイトカイン / 住血吸虫 |
研究概要 |
[背景と目的]微生物の感染によって、自己免疫性疾患やアレルギー疾患が抑制されるという報告が多くなされている(衛生仮説)。本研究では寄生蠕虫の「Th17型炎症抑制作用」の機序を主に遺伝子組換えマウスを用いて解析する。 [方法]昨年度までに、ストレプトゾトシン(STZ)誘発1型糖尿病に対してマンソン住血吸虫(Sm)および毛様線虫の一種H.polygyrus(Hp)が血糖値上昇を抑制することと、その作用はSTAT6に依存しないことを明らかにしてきた。本年度は(1)糖尿病抑制作用におけるIL-10の関与を検討するとともに、(2)Th17依存性の自然発症型自己免疫性関節炎(IL-1RaKOマウス)に対するSmおよびHp感染の影響を検討した。[結果](1)Sm,Hpともに、IL-10KOマウスにおいても野生型と同様にSTZ誘発血糖値上昇を抑制した。(2)HpはIL-1RaKOマウスの関節炎発症を抑制しなかった。Smは5週令マウスに感染させた場合、その感染初期(0~6週)においては関節炎発症に影響を与えなかったが、8~10週にかけては足肢の腫脹を抑制する傾向が観察された。ただし、関節の強直に対する抑制は観察されなかった。[考察]他の寄生蠕虫と同様に、Sm,HpもIL-4,IL-13、IL-10などのTh2/Tregサイトカインを誘導することが知られているが、これらのシグナルは1型糖尿病の抑制作用には必須でないことが示された。また関節炎に対してはSmは抑制作用を示すがHpは示さないことより、寄生蠕虫による関節炎に対する抑制機序は1型糖尿病に対する抑制機序とは異なることが推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多くの炎症モデル系は確立され、ほぼ順調に稼働している。KOマウスの繁殖もおおむね順調である。
|
今後の研究の推進方策 |
<問題点>KOマウスが利用しやすいC57B1/6系統でのコラーゲン関節炎発症が成功していない。<対策>現在、STAT6KOマウスとIL-10KOマウスを関節炎感受性のDBA/1系統に戻し交配している。本年度には戻し交配をおおむね完了し、感染実験を行う予定である。また、C57BL/6背景のIFNγKOマウスの利用も考慮する。 <問題点2>IL-1RaKOマウスは関節炎発症が早すぎるため住血吸虫による効果が出始める頃(感染8週後)には既にかなり症状が進展している。<対策>さらに若齢(生後3週)に感染させて効果を再評価することとする。また、より早期にその効果を発揮できると思われる寄生蠕虫(縮小条虫)を導入し、感染実験を行う予定である。
|