研究概要 |
本研究では、IL-17の関与が示唆されているストレプトゾトシン(STZ)誘発1型糖尿病(T1D)およびIL-17依存性が証明されているIL-1RaKOマウス自然発症関節炎をモデルとして用いている。昨年度までに、マンソン住血吸虫(Sm)のが誘発型のT1Dを抑制すること、その作用はSTAT6およびIL-10に依存しないことを明らかにしてきた。本年度はSm感染マウスの膵リンパ節における関連遺伝子の発現について解析した。Sm 100隻を経皮感染させ、6週後にSTZ 50mg/kgを連続5日間腹腔内投与した。初回投与1週後にサンプルを採取しリアルタイムPCRを行った。STZ投与マウスの膵リンパ節では、無処置マウスに比べIL-1β、TNF-α、FasL 、IL-6などの発現上昇が観察された。これに対しSm感染マウスにおいては、IL-6を除くサイトカインとiNOSの発現が抑制されていた。膵実質においても同様の傾向が観察された。また感染マウス膵リンパ節では、IL-4, IL-13などのTh2サイトカインやArg-1, Fizz1などM2マクロファージ関連のパラメータの発現上昇が確認された。さらに、Tregを抑制するPC61抗体を投与しても高血糖抑制作用は減弱しなかった。これらの結果からSmによるT1D抑制作用にはTregではなくM2マクロファージが関与している可能性が高いと推測されるが、抑制効果にはSTAT6経路が必須ではない(昨年度報告済)ことから、より詳細な解析が必要である。 IL-1RaKOマウス関節炎については、Sm感染の影響を生後3週での感染(50隻)と5週での感染(100隻)において評価を行った。いずれの場合も感染後8、10週目の♂においては後肢の腫脹が抑制されていた。抑制効果が現れる時期から考えて、虫卵蓄積による免疫修飾の可能性があり、今後検討していきたい。
|