研究概要 |
これまでに進めてきている検討で,抗酸菌感染宿主に誘導される免疫抑制性マクロファージ (suppressor MΦ)(S-MΦ)との共培養により標的T細胞のアルドース還元酵素(aldose reductase : AR)のリン酸化が低下することが認められているので,平成22年度は,S-MΦの標的T細胞に対する抑制作用におけるARの役割について明らかにするために,ARタンパク質のアルドース還元活性とT細胞機能抑制との関連性について検討を行った。その結果,抗CD3/抗CD28抗体刺激(TCR刺激)により誘導されるT細胞の増殖シグナルに対してAR阻害剤(10μM epalrestat)は僅かに抑制効果を示すのみであった。また,TCR刺激で誘導されるT細胞のIL-2およびIFN-γの発現に対するepalrestatの影響についても検討したが,何れのサイトカインも発現量に変動が認められなかった。他方,S-MΦの標的T細胞に対する抑制作用に対してもepalrestatは僅かに低下効果を示すのみであった。なお,10μMのepalrestatは組換え体ARのアルドース還元活性を完全に阻害することを確認している。これらの成績は,AR蛋白質の脱リン酸化とT細胞の機能抑制との間においてアルドース還元活性は関与しないことを示唆するものであった。他方,T細胞内においてチロシンリン酸化ARと相互作用するタンパク質を明らかにするため,チロシンのリン酸化が確認されている組換え体ARとT細胞株(Jurkat cell)抽出液を供試してプルダウンアッセイを行った。その結果,およそ45kDa,48kDaおよび55kDaの3つの蛋白質との相互作用が認められた。次年度は,ARと相互作用するタンパク質の同定を行い,ARがT細胞内のどのようなシグナル系とかかわっているのかについて明らかにする予定である。
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