研究概要 |
これまでに進めてきている検討で,抗酸菌感染マウスに誘導される免疫抑制性マクロファージ(suppressor MΦ:S-MΦ)との共培養系において標的T細胞内のアルドース還元酵素(aldose reductase:AR)のリン酸化レベルが低下することが明らかになってきている.前年度における研究で,S-MΦからの抑制性シグナルによる標的T細胞の機能抑制はT細胞内のARの酵素活性(アルドース還元活性)の変動とは連動していないことが分かり,さらにチロシンリン酸化ARと相互作用する3種の蛋白質(45kDa,48kDaおよび55kDa)が検出されたことにより,ARはT細胞内の蛋白質と相互作用している可能性が示唆され,ARはT細胞内の何らかのシグナル伝達系に関与しているのではないかと考えられた.そこで今年度はさらに検討を行い,S-MΦとT細胞との共培養系において,IL-17産生T細胞の増加ならびにインターフェロン-γ産生T細胞の減少が認められた.またin vitroにおけるTh17細胞への分化誘導刺激下で,S-MΦはRORγt陽性,T-bet陽性,GATA3陰性,Foxp3陰性を示すT細胞サブセットに対するIL-17産生増強作用を示した.またこの場合にγδT細胞からのIL-17産生増強は認められなかった.以上の成績からS-MΦによるT細胞のIL-17産生増強はTh17細胞(RORγt陽性,T-bet陽性)によるものであると考えられる.現在さらにチロシンリン酸化ARに相互作用する蛋白質の同定についても進行中であり,チロシンホスファターゼ(SHP-1/SHP-2,LAR,Yop51,PTP1B,CD45など)によるARの脱リン酸化のプロフィールについて検討中である.他方,プルダウンアッセイによりチロシンリン酸化ARと共沈する45kDa,48kDaおよび55kDa蛋白質に関する検討も行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫抑制性マクロファージ(suppressor MΦ:S-MΦ)は,Th17細胞からのIL-17産生を増強するとともに,Th1細胞からのインターフェロンγ産生を強力に抑制することが明らかとなったことから,抗酸菌感染宿主に誘導されるS-MΦの役割についての新しい知見を得ることができた.これにより研究はおおむね順調に進展しているものと評価した.
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