ノルエピネフリン(NE)をはじめとするカテコールアミンは細菌感染症の増悪因子であることが知られている。細菌感染症罹患時にはNEが多量に体内に分泌されることが知られており病状がさらに増悪することが指摘されている。しかしNEによる感染症増悪機構は明確ではない。そこで本研究ではNEなどカテコールアミンによる病原性細菌の病原性活性化機構を明らかにし、その阻害方法を検討することにより感染症治療に役立てることを目的とした。 本件研究では、カテコラミンによる腸炎ビブリオの病原性活性化機構を解析した。さらにカテコラミンによる宿主側因子と腸炎ビブリオ病原性に対する効果の解析した。最後にカテコラミンによる腸炎ビブリオの病原性亢進作用機構の阻害法を検討した。 本研究では、申請者が一貫して研究してきた腸炎ビブリオを用いて解析を行った。腸炎ビブリオ感染症は一般の腸管細菌感染症の代表的モデルとも考えることができる。さらに本研究の結果は腸管内細菌感染症だけにとどまらず、敗血症など全身性の細菌感染症により体内でのカテコールアミン等の分泌が多い時の治療にも応用することができると考えられた。またカテコールアミンは昇圧剤として広く使用されており、カテコールアミンと細菌感染症の病態との関係を明らかにしたことは、治療方針にも影響を与える重要な問題であると考えられた。
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