化膿レンサ球菌はLactate oxidaseを利用し自らが産生した乳酸を再利用しATP産生に寄与していることは我々が以前報告しているが、酵素そのものについての基本的データの報告もなく、病原性との関連も明らかでない。病原性との関連はこの酵素の変異株を作成し動物実験で確認することを検討していたが、本酵素を持つ細菌は少ないため本酵素についての文献等情報に乏しく、我々は本酵素と病原性との関連を確認する前に、本酵素を精製し人為的に加えた乳酸を基質としうるかどうか、分子量など基本的なデータを得なければならないと考え、本酵素の精製を行った。現在では大腸菌に発現させたタンパクにHisタグを付け精製する方法が主流であるが、本酵素にHisタグを付けた場合、活性は保たれるもののニッケルカラムに吸着せず、この方法では精製できないことが判明した。このことからHisタグを隠してしまうような立体的な構造が予想された。陰イオン交換、ゲル濾過、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにより本酵素を単一なタンパクとして精製することに成功した。過酸化水素産生株、非産生株由来のlactate oxidaseを比較すると、非産生株由来の酵素は活性を殆ど失ってしまっていることも明らかとなった。ゲル濾過の結果より本酵素の分子量は200kDa強であり、遺伝子配列から推測される分子量(43kDa)の数倍であることを見出した。このことから、本酵素はサブユニット4~6個から成る数量体であることが判明した。この結果はHisタグを用いて精製が不可能であった事実と一致する。現在oxidase活性、monooxigenase活性、活性中心の同定、また変異株を作成し病原性との関連を検討している。
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