レンサ球菌(Streptococcus)属菌は、生体内から病原体または常在菌としてのみ分離され、環境中からは殆ど分離されない。これは、本属菌の生態が生体内の物質と密接な関わりを持つことを示しており、生体内のおける本属菌の生態を解明することは極めて重要である。本研究では、我々が以前に明らかにしたS. pyogenesとS. agalactiaeに存在する酸素を利用する代謝経路を中心に、生体内に存在すると考えられる物質とこれらの菌の代謝経路の関係を解析した。その結果、S. pyogenesは自らが作り出した乳酸のみならず外界の乳酸もATP産生に使うことが可能であると思われる知見を得た。また、S. agalactiaeでは生体内で本菌の持つ溶血素を使うことで利用可能になると思われるhemeを外界から取り込み、電子伝達系を活性化できることを示した。これらの研究成果は、本属菌が生体内の物質と密接に関連した生態を持つことを示しており、生体内に常在することで能率的にATPを産生し、その結果病原性を発揮することにつながることを示しており、本属菌の生態を理解する上で重要な知見を与えると思われる。
|