研究概要 |
CSA-13でコートしたハイドロキシアパタイト(HA)やCSA-13を混合した歯科用セメントでのS.mutansの増殖阻止作用について検討した。本実験での培養条件下でCSA-13のコートをされなかったHA表面(2.5×10^5/cm^2)には細菌のバイオフィルムが24時間の静置で形成された。それに対し、CSA-13でコートされたHA表面には検出限界(1.1×10^1/cm^2)以上の細菌が認められなかった。 CSA-13をコートしたHAおよびコートしていないHAをBHI培地中に浸漬しS.mutansの増殖に及ぼす効果を比較した実験ではCSA-13をコートしたHA小片は細菌の増殖を著明に抑制した(14.6% vs medium only, P<0.01)。これに対し、CSA-13のコートをしていないHA小片はS.mutansの増殖を抑制せず、かえって増殖の促進を示した(144.9% vs medium only, P<0.01)。 走査電子顕微鏡観察において、CSA-13をコートされていないHA小片表面には平均3.3±2.4×10^5/cm^2の球菌が観察されたが、CSA-13をコートされたHA小片表面には球菌が計測されなかった。歯科用セメントにCSA-13を混合した場合の細菌に対する増殖抑制効果は著明であった。増殖抑制効果はCSA-13の濃度が100μg/gでも認められた。本実験で、これらの歯科材料はS.mutansの定着や増殖をほぼ完全に阻止した。 本研究結果から、実際の歯科診療において細菌感染に起因する口腔疾患の予防・治療にCSA-13をコートあるいは混合させた歯科材料を使用することによる有用性が示唆された。
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