23年度までの研究でCSAが口腔細菌によるバイオフィルム形成に対して阻害作用を有することが明らかになり、24年度では歯科材料に混入させる実験を継続した。さらに、25年度ではCSAの抗菌作用に抵抗性を有する細菌が誘導されるかどうかの検討、およびCSAの実験の比較に用いる抗菌タンパクを遺伝子操作によって、大量に作成する検討を行った。 CSAの抗菌作用に対して抵抗性を有する細菌の出現に関する検討では、抗菌作用を示さない濃度のCSAを培地中に混合し、臨床分離株の大腸菌とブドウ球菌を継代を繰り返しながら継続的に1カ月間培養する実験を行った。1か月後に殺菌量のCSAを加えた培地に菌を戻し培養を行ったが、実験期間内では抵抗性株の出現は認められなかった。 抗菌タンパクを遺伝子操作によって作成する実験では、SUMOタンパク遺伝子とCAP18遺伝子を連結させることで大腸菌に産生させる段階での抗菌活性を抑制させ、産生後にプロテア-ゼ処理をすることで効率よくリコンビナント抗菌タンパクを作り出すことができるようになった。しかしながら、シグナルタンパク、カセリンタンパクおよび活性タンパクを含むCAMPタンパク全体をコ-ドする遺伝子を挿入すると挿入された大腸菌が傷害されてタンパクを回収することができなかった。これは、シグナルあるいはカセリンタンパクのいずれかに活性タンパクを切り離す作用を持つプロテア-ゼが格納されていることを示唆した。一方、CAP以外の抗菌タンパクについては、牛由来の抗菌タンパクであるBMAP28について、リコンビナントタンパクの作成を試みたが、BMAP28については、シグナルタンパクを含む大きなタンパクでも活性部分のみでも大腸菌に産生させることができなかった。
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