研究課題/領域番号 |
22590398
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
三宅 正紀 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (00295560)
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キーワード | 細菌 / 病原性 / レジオネラ / 細胞内増殖 / 細胞毒性 / アポトーシス |
研究概要 |
4株のTox^h変異株について、昨年度の当該変異株感染U937細胞の電子顕微鏡観察では、宿主細胞に対する毒性がピロトーシス誘導に起因することを疑う所見は特に見つけられなかった。一方、これら変異株は、U937細胞内で、エフェクターを送達することにより、レジオネラ病原株感染時に特異的に形成されるファゴソーム(Legionellaonta-cining Vacuole,LCV)と形態的に類似した小胞を形成し、その中に留まることがわかった。これらの結果を踏まえて、本年度は、まず、Tox^h変異株感染時の細胞毒性が、野生株と同様に、アポトーシスに起因する可能性を共焦点レーザー蛍光顕微鏡にて検証した。その結果、感染4時間後に、宿主細胞のcaspase-3の活性化、感染10時間以降に、核の断片化が観察され、Tox^h変異株が、野生株と同様に、宿主細胞にアポトーシスによる細胞死を誘導することが分かった。一般に、IV型分泌装置Icm/Dot変異株をはじめとする既知の細胞内増殖性変異株による宿主感染では、LCVは形成されず、また、宿主に対する細胞毒性、細胞死を誘導しない。本研究において、Tox^h変異株が、エフェクターの宿主内輸送性を保持し、野性株感染時と類似のLCVを形成するにもかかわらず、細胞内増殖性を欠損する一方で、野生株と同様にアポトーシスを誘導することで、宿主細胞に対して、高い細胞毒性を有することが示され、当該変異株がこれまでに報告例がない特有な性状を持つ細胞内増殖性欠損株であることが明らかとなった。さらに、これらTox^h変異株のゲノム上におけるTn挿入部位を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度までの目標として設定した以下の2点;Tox^h変異株の感染性状及び宿主細胞に毒性を発現する機構の大枠を明らかにすること、また、当該変異株の変異遺伝子を同定すること、をクリアできているため。
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今後の研究の推進方策 |
Tox^h変異株の特異的性状に起因する責任遺伝子を決定し、その機能を明らかにすることで、Lpの宿主感染における細胞内増殖と宿主細胞死誘導に関わる新たな知見を見出し、その制御機構の解明に繋げる。
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