研究概要 |
Mycobacterium avium-intracellulare complex(MAC)菌の細胞表層に存在する糖ペプチド脂質抗原glycopeptidolipid(GPL)はMAC菌の血清型を規定する脂質抗原分子である。宿主免疫応答の制御因子としてGPLが病原性・感染性へ関与することを血清型特異GPL構造の差異、生合成経路、宿主免疫応答の観点から実証することを目的とした。 昨年度は、新規血清型13型GPLの化学構造を同定した。血清型7,12型GPLとの構造類似性を示し、メチル基転移酵素遺伝子群orfA,orfB,orf2のクローニングとその比較から生合成経路についても解析した。これらの結果を基に、今年度は、血清型13型GPLの宿主応答機序について検討した。先ず、血清型GPLはアルカリ安定脂質として弱アルカリ加水分解後の構造で規定しているが、天然では糖鎖にアセチル基が付加した状態で存在することが明らかとなった。血清型13GPLは付加するアセチル基の数と位置によりクロマトグラフィー上で6種類のスポットを確認し、質量分析から付加アセチル基の数を決定した(結合位置は未同定)。弱アルカリ加水分解によりアセチル基は全て脱落し、薄層クロマトグラフィー上で1スポットに収束した。次に、宿主応答を検討したところ、アルカリ安定GPLでマウス脾臓細胞を刺激しても細胞は活性化されなかったが、天然型GPL刺激によりマウス脾臓細胞の活性化が認められた。この宿主認識はTLR2依存的なマクロファージの活性化であることを解明した。 以上より、MACの血清型を規定しているGPLは天然ではアセチル基が付加した状態で存在し、TLR2依存的に宿主認識され、その分子機構としてGPLの糖鎖へのアセチル基修飾が必須であることが解った。 本年度の研究により、GPLの構造偏在性と宿主応答のアッセイ系が確立したので、天然型GPLの詳細な構造と宿主応答相関の解析を可能にする基盤ができた。
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