MAC臨床分離株Ku11のGPLは、質量分析、NMR解析の結果から、糖鎖構造がRha-2-O-methyl-Rha-Rha-Rha-Rha-6-deoxy-Talからなる新規GPLであると考えられた。GPLの構造解析は弱アルカリ加水分解を施し構造解析するが、MAC菌のGPLは糖鎖水酸基の一部がアセチル化された天然型GPL (intact GPL) として存在し、intact GPLのアセチル化パターンと宿主応答について検討した。Ku11株はGPLの糖鎖部分にアシル基修飾がない構造であり、本検討には最適と考えた。 Ku11株のintact GPLは、菌体総脂質から薄層クロマトグラフィーを用いて単離精製し、MALDI-TOF/MSによってアセチル基付加の構造を解析した。さらに、宿主応答の評価は、ヒトToll-like receptor (TLR) 2およびTLR4遺伝子を導入したHEK293細胞およびマウスマクロファージ系細胞株RAW264.7細胞を各GPLで刺激し、サイトカイン産生を比較した。 MALDI-TOF/MS解析の結果、Ku11株のintact GPLは、6-deoxy Talおよび2-O-methyl-Rha部分に1から3個のアセチル基が結合し、その結合位置と結合数の相違により6種類のintact GPLの存在を確認した。2-O-methyl-Rhaにアセチル基修飾がないintact GPLはTLR2を介して宿主認識されたが、アセチル化2-O-methyl-Rhaを持つintact GPLはTLR2によって宿主認識されなかった。以上より、MAC菌はTLR2による宿主認識を回避するために、GPL糖鎖の2-O-methyl-Rhaをアセチル基で修飾している可能性が示唆された。
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