研究概要 |
V.vulnificusゲノムに署名Tagトランスポゾンを挿入した変異株をマウス生体通過させ、署名Tagドットハイブリダイゼーション法で、生体通過が出来なかった株を推定し,それらについて,鉄投与により感染感受性化したマウスに腹腔注射により,その最小致死菌数を測定した。また,トランスポゾン挿入部位は,変異株のゲノムDNAからトランスポゾンのカナマイシン耐性遺伝子を含む領域をクローン化し,トランスポゾン挿入部位の塩基配列を決定し,その遺伝子を検索した。マウス生体通過できずにドット・ハイブリダイゼイション法でシグナルが著しく減弱した株が最終的に12株見出されたので,それらについて,そのマウスに対する最小致死菌数を測定した。親株であるOPU1株の最小致死菌数は、鉄剤で感染感受性化したマウスで約10 cfuであったのに対して、分離した12株の最小致死菌数は10^3-10^6cfuあり、毒性が著しく減弱していることが確認された。それらの弱毒化株のトランスポゾン挿入部位周辺をプラスミドベクターにクローン化し,トランスポゾン挿入部位のDNA配列を決定した。得られた塩基配列をV.vulnificusのゲノムdata baseで比較したところ、相同する遺伝子が見出された。その結果,挿入部位の塩基配列がIMP脱水素酵素、UDP-N-アセチルサミングルコサミン-2-エピメラーゼ、アスパラギン酸リン酸化酵素をコードする遺伝子および未知のORFと高い相同性を有することを見出した。これらの遺伝子はこの菌の病原性に関連した働きをしていると考えられた。またトランスポゾン挿入弱毒化変異株を腹腔注射によりマウスに免疫誘導を試みたところ、免疫菌数2.5×10^4-2.5x10^6cfu/mouse、2回の免疫後、親株による感染攻撃に大して著しい感染防御効果が見られた。以上のことから、LPSや莢膜の構成成分合成に関係する遺伝子や、代謝に関係する遺伝子がV.vulnificusの病原性に関与していることが示唆された。
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