研究課題/領域番号 |
22590400
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
山本 耕一郎 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (30158274)
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研究分担者 |
中田 和江 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (60411740)
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キーワード | Vibrio vulnificus / 感染 / 食品衛生 / 毒素 / 細菌 / 遺伝子 / ワクチン / 肝硬変 |
研究概要 |
バルニフィカス菌(Vibrio vulnificus)は魚介類の生食などで、肝臓疾患などの基礎疾患をもつヒトに感染し、その死亡率は50%を超える。魚介類生食の習慣がある日本にとって、この感染症は重要な疾患である。この菌の産生する毒素について様々な研究があるが、感染メカニズムはほとんど解明されていない。今回,トランスポゾン(Tn)変異法を用い様々な病原関連遺伝子を見出した。 1.署名TAGTn挿入変異法を用い、感染性が1/100-1/1000,000低下した変異株を多数分離し、その挿入変異遺伝子を特定した。これらは、IMP脱水素酵素遺伝子、UDP-N-アセチルサミングルコサミン-2-エピメラーゼ、アスパラギン酸リン酸化酵素などで,代謝や莢膜合成などの遺伝子が病原性に関係することが示唆された。 2.IMP脱水素酵素遺伝子変異株をワクチンとして用いると,マウス感染攻撃に対し高い感染防御効果を見出し,ワクチンとして可能性が示唆された。 3.TnphoA変異法で分泌タンパク変異株をカイコ感染モデル系で調べたところInsulinase family protease(HFP)変異株で,病原性の著しい低下を見出し,HFPの感染性への関与が示唆された。 4.Tn変異法を用いてバルニフィカス菌の膜破壊毒(溶血素,Vvh)を調べたところ溶血性が低下又は反対に増強するTn挿入変異株を多数見出し,調節遺伝子の存在が示唆された。 5.低下株の大半はII型分泌機構であるGeneral Secretion Pathway(GSP)の遺伝子破壊株であるこを見出した。現在,GSP変異溶血し低下株での病原性への関与を鋭意研究中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
様々なトランスポゾン変異株を数多く得て,それらの中に病原性が失っているもの多く見出し基本的な部分はほぼ終えているが,バルニフィカス菌は大腸菌などに比べ形質転換がほとんどできない,接合の効率も非常に低いことから,相同組み換えによるターゲット遺伝子に対する完全欠失株分離に手間取っていることが主な理由である。
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今後の研究の推進方策 |
基本方針は大きな変更はないが,初期にはマウスによる感染実験で病原性の測定を行う予定であったが,マウスでは施設的な節約や,経費が著しくかかることから,カイコを用いる感染実験に変更し,基礎的な方法はほぼ確立した。これにより非常に多くの株の病原性が測定できるようになりつつあり,ほぼ当初からの目的である病原性因子の同定が可能となる。マウスによる実験はスクリーニングに用いず,最終的な免疫実験に絞って,ワクチン株の開発に望む予定である。
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