研究概要 |
黄色ブドウ球菌が対数増殖期に発現するフィブロネクチン結合因子にはFnBPA, FnBPBの2つのホモログが存在する。この結合因子が宿主への感染に重要であることは多く報告されているが、FnBPAとFnBPBの機能的役割についてはまったくわかっていない。 本研究では、黄色ブドウ球菌株SH1000を親株としてFnBPA, FnBPBのシングルノックアウト株およびダブルノックアウト株を作成し、これらを用いて培養細胞および生体に感染させ、それぞれの因子の感染成立・病原性発現における役割について解析する。 本年度は、相同組換え法、ファージによる遺伝子導入などを使って、SH1000株よりFnBPA^-株、FnBPB^-株、FnBPA^-/FnBPB^-株およびそれぞれの補完株を作成し、これらを用いて非貪食細胞(血管内皮細胞、線維芽細胞、腎上皮細胞)と炎症性の食細胞である滲出性マクロファージに感染させた。その結果、非貪食細胞への侵入はFnBPA-株でほぼ完全に阻止されたが、FnBPB-株では有意な低下は認められたもののFnBPA-株ほどの効果は見られなかった。更に炎症惹起能を検討するためにNF-kBの核への移行を検討したところ、非食細胞においても炎症性マクロファージにおいてもFnBPA-株でほどんど移行が認められなくなったのに対して、FnBPB-株では半分程度の低下にとどまった。この結果は炎症性マクロファージの炎症性サイトカイン発現においても同様に認められた。 これらの結果から、in vitroにおける培養細胞への感染には、FnBPAが重要な役割をもつと考えられる。
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