研究概要 |
黄色ブドウ球菌が保有する宿主組織への主要な接着因子に, Fibronectin-Binding Protein AおよびB (FnBPA, FnBPB)が存在する。黄色ブドウ球菌感染におけるこれら2つのホモログの機能 ―相補的に働いているのか, 独立しているのか― を調べるため, それぞれのノックアウト株および補完株を作成し, これまでにin vivoでの検討を行ってきた。その結果, 黄色ブドウ球菌感染の効果的成立には、FnBPA, FnBPB両因子が協調的に働くことが必要であるが、細胞内への侵入や血流に抵抗し得る強固な接着にはFnBPAが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。そこで、マウスの脾臓に発現している転写因子NF-κ-Bを検討したところ、野生株の感染において大量の因子の活性化が見られたが、FnBPA欠損株の感染では活性化はほとんど認められなかった。さらに、血清中のIL-6濃度は、野生株で顕著に増加したが、FnBPB欠損株で約80%、FnBPA欠損株およびFnBPA/B欠損株で約50%に減少した。さらに、繊維芽細胞、炎症性マクロファージを用いたin vitro感染実験の結果においても、FnBPB欠損株に比べてFnBPA欠損株で細胞内への菌の侵入および炎症応答が著しく低下した。 これらの結果より、in vitro、in vivoいずれの感染においてもFnBPAがより重要な役割を果たしていること、しかしながら、in vivo感染においては両社が協調的に働くことによって、重篤な感染を惹起することが示唆された。
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