研究概要 |
内容:H.pylori 26695のアスパラギナーゼのリコンビナント蛋白の作成を試みた。しかしながら正常な活性を持つリコンビナント蛋白は、発現、精製が不可能であることが分かった。外国のグループから報告があったリコンビナント蛋白についても、正常な活性をもつもではないことを指摘した(Shibayama,Microbiol.Immunol.,in prsss)。リコンビナント蛋白が作成できなかったため、精製蛋白やアスパラギナーゼ欠損株を用いて、この蛋白の細胞毒性を確認する実験を行った。精製蛋白、および生菌いずれにおいてもU937細胞に対する細胞毒性はアスパラギンを添加することにより補完されたため、アスパラギナーゼ活性がこの細胞毒性に関与していることはほほ間違いないと結論づけられた。スナネズミを用いた感染実験も実施した。アスパラキナーゼ欠損株は、胃に感染できないことが分かった。GGTの欠損株6同様に感染できない事が分かった。 意義:H.pyloriがのアスパラギナーゼは、宿主に対して細胞毒性を示し、感染成立に寄与する病原因子として働いている事が分かった。前年度、この蛋白は菌自身にとっても栄養源であるアスパラギンの獲得に重要な代謝酵素である事を明らかにしたが、本年度の成果によりこのアスパラギナーゼが菌の必須な代謝酵素であるとともに重要な病原因子としても働いている蛋白であることが確認できた。 重要性:ヘリコバクターピロリの持続感染メカニズム、病原性の全体像を明らかにしていくにあたり、一つの重要な足掛りを得ることが出来た。今後この知見をさらに発展させ、この菌による胃炎、胃潰瘍、胃癌の発生メカニズムの解明につながると期待できる。
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