本研究では、結核菌タンパク質PE_PGRS62の感染における役割を明らかにするために、まずマクロファージ内での増殖速度を測定した。C57BL/6マウスから骨髄マクロファージを得て、結核菌Erdman株及びErdman株を親株として作製したPE_PGRS62遺伝子破壊株を細胞1に対して菌3の割合で感染させた。その結果PE_PGRS62遺伝子破壊株は、Erdman株と比較して、マクロファージ内で増殖しにくくなっていることを見出した。さらに、PE-PGRS62遺伝子破壊株を親株として、PE_PGRS62タンパク質を強制発現させる補完株を作製し、同様にマクロファージ内での増殖速度を測定したところ、補完株は、Erdman株と同等の増殖速度を示し、PE_PGRS62がマクロファージ内での増殖に必要である事が示唆された。次に、PE_PGRS62と相互作用することで見出したPeroxiredoxin1(Prdx1)についてPrdx1-/-マウスの結核菌感染に伴う臓器生菌数の推移を測定した。結核菌Erdman株を尾静脈より2×10^6 CFU感染させ、脾臓・肝臓・肺内の生菌数を測定したところ、獲得免疫が成立する2-3週以後に、Prdx1-/-マウス臓器内の菌数がC57BL/6マウス臓器内の菌数を上回る事が明らかとなった。これより、Prdx1が結核感染に際し、獲得免疫において結核防御因子の役割を果たしている事が示唆された。また、Prdx1-/-マウスから得た骨髄マクロファージに結核菌を感染させ、その増殖速度を測定したところ、IFN-γによりマクロファージを活性化させた場合に、結核菌の増殖が、野生マウスから得た骨髄マクロファージ内でより速くなった。IFN-γは、獲得免疫成立後に臓器内で検出されるサイトカインであり、これによるマクロファージの活性化に、Prdx1が関与している可能性が示唆された。
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