研究課題
本研究では、既に報告されている魚類結核菌の病原因子PE_PGRSタンパク質の情報をもとに、その相同性タンパク質である結核菌PE_PGRS30タンパク質およびPE_PGRS62タンパク質が病原因子であるかどうかを、それらの遺伝子破壊株を感染させたマウスの生死観察により調べた。その結果、PE_PGRS62タンパク質が結核菌の病原因子であり、PE_PGRS30タンパク質が病原因子でないことが明らかになった。病原因子であった結核菌PE_PGRS62タンパク質の役割を調べるために、結核に対して主に抵抗性を示す宿主細胞であるマクロファージとT細胞のうち、まず、マクロファージにおけるPE_PGRS62タンパク質の役割について調べた。結核菌野生型株(Erdman株)およびPE_PGRS62遺伝子破壊株を、マウス骨髄から調製したマクロファージに感染させ、それらの菌株のマクロファージ内の増殖速度を生菌数(CFU)測定により評価した。その結果、PE_PGRS62遺伝子破壊株は野生型株にくらべ、マクロファージ内での増殖速度が低下していた。次に、宿主の結核防御因子としてペルオキシレドキシン1(Prx1)について解析を行った。Prx1ノックアウトマウスは結核への感受性が高いことを我々の研究グループで明らかにしていたので、Prx1の役割をマクロファージおよびT細胞で調べた。その結果、結核菌感染により誘導されるマクロファージの免疫反応にPrx1が必須であることがわかった。また、マイトジェンによるT細胞活性化を行ったところ、T細胞の活性化にPrx1が必須であることも明らかにした。本研究に用いた強毒結核菌であるErdman株の全ゲノムを解析し、全塩基配列を報告した。
2: おおむね順調に進展している
新たに結核菌の病原因子および結核防御に必須な宿主因子をそれぞれ同定し、論文投稿準備中である。結核菌の培養・マウス結核モデルを用いた結核菌の弱毒化の評価には半年程度かかるため、実験を反復して結核菌の病原因子および宿主防御因子を同定したため、本研究はおおむね順調に進展したと言える。同定した分子の機能解析については研究を進展させる必要がある。
結核菌病原因子PE_PGRS62と宿主防御因子Prx1が、結核菌感染において重要な役割を果たすことを明らかにできた。研究計画では、PE_PGRS62がPrx1に結合し、結核成立にこれらの分子が相互に関係していると予想したが、その後の実験結果からこれらの分子は別々に機能していることがわかってきた。したがって、当初の研究計画を変更し、結核菌の感染において結核菌タンパク質PE_PGRS62がどのように宿主防御を抑制するか、また、結核菌がマウスに感染した際に宿主タンパク質Prx1がどうのように結核菌の生育を抑制するかについて研究を遂行すべきである。
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J Clin Microbiol
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