ウイルスRNA内に存在する新規内部認識翻訳開始機構の翻訳開始点を同定するために、大量の組み換えタンパク質を発現する目的で組み換えウイルスベクターを作製した。10の7~8乗 PFU/mLのウイルス液を得て、哺乳動物培養細胞への感染実験を行った。キャップ依存性の第1シストロンについては、リポフェクションよりも高いタンパク質の発現が得られるものの、新規翻訳開始機構および、陽性対照の既知の内部認識翻訳開始部位 (IRES) に依存した翻訳開始については、十分量の発現が得られないという結果を得た。組み換え遺伝子の構築と導入方法を見直す必要が生じた一方で、キャップ依存性の機構と新規機構・IRES依存性機構との間で至適条件が解離している可能性が考えられた。 新規翻訳開始機構を解析する組み換え遺伝子を構築する上で、理解・制御することが必要な転写後遺伝子発現機構について、以下の成果を得た。 1.ジシストロニック遺伝子の第1シストロンと遺伝子間領域の接続について、遺伝子間領域が第1シストロンのtermination read-through (翻訳終止・読み飛ばし) に及ぼす影響を解析し、遺伝子間領域のRNAの二次構造・三次構造よりも、終止コドン直後の配列が影響を持つ場合があることを、培養細胞を用いて明らかにした。 2.異所性スプライシングに関連し、宿主因子の選択的スプライシングに解析の対象を拡げた。スプライシング効率を定量する目的で、ミニ遺伝子を用いた発現系を構築した。ウイルス感染時に誘導されるサイトカイン受容体ST2/IL1RL1のスプライスバリアントST2V2について、コードされるタンパク質の発現を培養細胞を用いて確認し、リガンドであるIL-33の発現に影響を及ぼすことを明らかにした。 3.mRNAのポリA付加について、微弱な付加部位を同定した。
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