ヒトメタニューモウイルス(hMPV)アクセサリー蛋白質の二つの機能を解析し、以下の結果を得た。 1.アクセサリー蛋白質のゲノム転写複製制御機構の解析 (1)(1)M2-1蛋白質は、ウイルスゲノムの転写複製を促進するが、転写複製に必須な蛋白質ではない。(2)もう一つのアクセサリー蛋白質M2-2は、転写と複製の両方を抑制し、感染細胞内での転写複製調節の役割を担っていると考えられた。(3)この抑制活性の発現には、M2-2蛋白質のC末端とN末端(両方ともアミノ酸4-8個からなる領域)が必須であることが明らかとなった。 (2)転写複製複合体を形成するN蛋白質、P蛋白質、L蛋白質のうち、M2-2蛋白質はL蛋白質と結合しており、この結合を通じて転写複製を制御していると考えられた。 2.アクセサリー蛋白質によるインターフェロン(IFN)-α産生抑制機構の解析 (1)(1)hMPVのM蛋白質とM2-2蛋白質には、293T細胞で再構成したToll-like receptor(TLR)7/9依存性IFN-α産生シグナル伝達を阻害する能力があった。(2)常時活性型IRF7-2DあるいはIPS-1とIRF7の共発現によるIFN-α6プロモータの活性化をM2-2蛋白質は抑制できなかった。したがって、M2-2蛋白質はIRF7の活性化あるいはそれより上位のTLR7/9依存性経路特異的プロセスを阻害していると考えられた。IRF7のリン酸化についても検討したが、リン酸化の検出は難しく、今後の課題となった。 (2)M2-2蛋白質はIRF7だけでなくTRAF6やIKKαにも結合することを明らかにした。これらの蛋白質の中に標的分子が存在する可能性が示唆された。 (3)M2-1蛋白質、M2-2蛋白質と相互作用する宿主分子を質量分析LC/MC/MCにより同定した。M2-1蛋白質ではpolyA binding protein cytoplasmic 4等、M2-2蛋白質ではubiquitin等の分子との相互作用が検出された。これらの相互作用の意味については、次年度以降の課題となった。
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