研究課題/領域番号 |
22590414
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
後藤 敏 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00211920)
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キーワード | ヒトメタニューモウイルス / アクセサリー蛋白質 / 転写複製 / M2-2蛋白質 / インターフェロン / TLR7/9 / IRF7 / TRAF6 |
研究概要 |
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)アクセサリー蛋白質M2-2(約70アミノ酸)の変異体2種pm1(E27A/D29A/E30A)とpm2(K36A/E37A/K39A/E40A)を作製し、二つの機能についてwild type (wt)と比較検討した。 1.アクセサリー蛋白質のゲノム転写複製制御機構の解析 ミニゲノム転写複製系においてpm1は転写複製抑制能を喪失していたが、pm2はwtと変わらぬ抑制能を保持していた。しかしながら、いずれの変異タンパク質もLタンパク質との結合能は保持していた。したがって、pm1で置換したアミノ酸の領域(27-30)は、Lタンパク質の結合に必須なアミノ酸ではないが、抑制活性の発現には重要なアミノ酸であると考えられた。一方、36-40の領域は、転写複製抑制に関してあまり重要ではないと考えられた。 2.アクセサリー蛋白質によるインターフェロン(IFN)-α産生抑制機構の解析 (1)pm1とpm2は、いずれも293T細胞で再構成したToll-like-receptor (TLR)7/9依存性IFN-α産生シグナル伝達を阻害する能力を保持していた。pm1は転写複製抑制能を喪失しているがIFN-α産生シグナル伝達阻害能を保持していることから、両者の抑制能は独立の活性であることが明らかとなった。 (2)M2-2蛋白質はIRF7だけでなくTRAF6やIKKαにも結合する。これらの結合が直接的な結合なのかあるいは間接的な結合なのかを調べるため、同じ科のセンダイウイルスVタンパク質を利用してその方法論を検討した。その結果、昆虫細胞での単独発現ならびに293T細胞での過剰発現やsiRNAによるノックダウン、ノックアウトMEF (mouse embryofioblast)を利用することで、解析を進められることが明らかになった。 (3)IRF7のリン酸化の検出は、リン酸化IRF7に対する抗体を利用してもその検出感度が低いため難しい。しかしながら、ホスファターゼ処理により、IRF7の上部に現れる2本のバンドがリン酸化バンドであることを示すことに成功した。この方法により、今後、リン酸化IRF7に対する解析が大きく進むと期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
M2-2の変異体の解析により、二つの活性が独立した異なる活性であることが明らかとなった。 当初の目的の最も重要な部分が達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、変異ウイルスの作製とその性状の解析をすすめる予定である。
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