当初予定していた研究目的は、平成22および23年度において、終了することができた。平成24年度は、得られた成果をさらに進展させる研究を行った。平成22および23年度の研究から、予期していた通り、マウス白血病ウイルス(MLV)やCD4非依存性ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)の標的細胞への侵入がエンドソームを経由し、エンドソームに存在する蛋白質分解酵素が感染に影響する結果が得られた。すなわち、エンドソームは、これらのウイルス感染において重要な細胞内オルガネラであることを示している。 一方、インターフェロンは様々な抗ウイルス因子の発現を誘導し、宿主をウイルス感染から防御する。インターフェロンによって誘導される細胞因子はいくつか既に同定されたが、それ以外にも多くの抗ウイルス因子が存在すると考えられている。 これらのことから、インターフェロンによって発現が誘導されエンドソームに局在する細胞因子が、新規抗ウイルス因子として機能する可能性が考えられた。そこで、そのような細胞因子のHIVベクター感染に及ぼす影響を観察した。その結果、ある細胞因子がHIVベクター感染を強力に抑制することが明らかとなった。その細胞因子は、HIVによる感染だけでなく、マウス白血病ウイルス、vescular stomatitis virus による感染も強力に抑制した。さらに感染だけでなく、その細胞因子はウイルス粒子の産生も大きく阻害した。これらの結果は、その細胞因子が、宿主のウイルス感染に対する防御因子として機能する新規細胞因子であることを示している。
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