研究代表者らは世界に先駆けてE型肝炎ウイルス(HEV)の効率的な培養細胞感染系を開発し、感染細胞から放出されたHEV粒子(培養上清中及びE型肝炎患者血清中の粒子)は表面にORF3タンパク質を有し、enveloped virusのように細胞膜様構造物で覆われ、浮上密度は1.15-1.16g/cm^3で、糞便中の粒子(1.27-1.28g/cm^3)よりも低いことを明らかにした。平成22年度は糞便、血清及び培養上清中のHEV粒子の浮上密度や抗原性の多様性に寄与していると考えられるORF2タンパク質、ORF3タンパク質及び細胞膜様構造物のassociationについて検討を行い、以下の知見を得た。 患者血清中のHEV抗体は糞便中のHEVに対して中和活性を有するが、血清中及び培養上清中のHEVの感染性を阻止することはできないこと、血清中のHEV粒子の90%以上はHEV抗体の共存下においても免疫複合体を形成していないことより、HEV中和抗体エピトープは細胞膜様構造物により覆い隠されていると考えられた。また、血清中及び培養上清中のHEV粒子は界面活性剤又は有機溶剤で処理すると、処理前には低値であったORF2及びORF3タンパク質の抗原性が部分的に出現し、浮上密度が1.20-1.25g/cm^3にシフトすること、界面活性剤とタンパク分解酵素の両者で処理すると、ORF3タンパク質が消化されて消失し、細胞膜様構造物が完全に除去されてORF2タンパク質が露出し、それに伴い浮上密度が糞便中HEV粒子と同じ1.27-1.28g/cm^3になることが明らかになった。 以上より、培養上清中に産生されたHEVを界面活性剤及びタンパク質分解酵素で処理して、細胞膜様構造物及びORF3タンパク質を除去することにより、ワクチンとして中和抗体誘導能を有するHEV粒子を作製することができることが示された。
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