研究課題/領域番号 |
22590419
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
高橋 雅春 自治医科大学, 医学部, 講師 (70326841)
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キーワード | E型肝炎ウイルス / ワクチン / 中和抗体 / 培養細胞 |
研究概要 |
研究代表者らはE型肝炎ウイルス(HEV)の効率的な培養細胞感染系を開発し、さらに患者糞便由来HEVの継代培養を繰り返すことにより増殖効率が高い馴化HEV株を樹立した。本研究課題は大量に産生することが可能になったnativeHEVを材料として、免疫原性が高く、感染予防効果が長期に持続することが期待される不活化ワクチン開発のための基礎的検討を行うことを目的としている。本研究課題では平成22年度までに糞便中のHEV粒子(浮上密度1.27g/cm^3)は表面にカプシド抗原が露出しているが、培養細胞由来HEV(1.16g/cm^3)は表面にORF3タンパク質とenvelopeのような膜様構造物を有し、カプシド抗原はこれに覆われて露出していないことを示すとともに、培養細胞由来HEVを界面活性剤(デオキシコール酸ナトリウム)及びタンパク質分解酵素(トリプシン)で処理することによりORF3タンパク質及び膜様構造物が除去されて、糞便HEVと同等の浮上密度及び抗原性を有するHEV粒子(以下、処理済み培養細胞由来HEV)が得られることを明らかにした。そこで平成23年度は処理済み培養細胞由来HEVの中和抗体誘導能について検討を行った。処理済み培養細胞由来HEVをマウスに免疫し、経時的に抗血清を採取した。マウスの抗血清中には酵素免疫測定法により抗カプシド抗体が検出され、産生された抗体は処理済み培養細胞由来HEVと結合することがimmuno-capturePCR法によって示された。また、感染培養系を用いたin vitro中和試験によりこのマウス抗血清は糞便由来HEVの感染を阻止しうることを実証できた。以上の結果より、処理済み培養細胞由来HEVは中和抗体を誘導する免疫原性を有していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
処理済み培養細胞由来HEVは未処理の培養細胞由来HEVと同等の感染性を有するため、ワクチンとして使用するために感染性を不活化する条件についての検討を継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、ワクチン抗原原料の大量生産を目的としてHEV高効率培養法のスケールアップ及びHEV精製方法の検討を行うとともに、各種アジュバントによる免疫原性の増強効果について検討を行う予定である。 研究を遂行する上での問題点は特にない。
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