研究課題/領域番号 |
22590420
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
黒田 和道 日本大学, 医学部, 准教授 (50215109)
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研究分担者 |
芝田 敏克 日本大学, 医学部, 研究員 (30398854)
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キーワード | インフルエンザウイルス / 出芽過程 / 蛍光タンパク質 |
研究概要 |
インフルエンザウイルス感染生細胞での2波長全反射顕微鏡による経時的観察において、観察中の細胞の運動により、焦点ずれが起こった。そこで、22年度に導入した対物ピエゾを用い、各時間において異なる焦点(z軸スライス)での画像を複数枚撮ることで対処した。また、各細胞の感染過程の進行は異なり、少数細胞の観察では適切な画像が得られないことが判明した。これについては、多点タイムラプスにより対処した。ウイルス感染細胞においてGFP-M1タンパク質と細胞膜マーカーであるCellMask Orangeを経時的に同時観察したところ、ウイルス感染後8時間程度で細胞表面にGFP-M1の穎粒を示す細胞が観察された。今回初めて、インフルエンザウイルス出芽過程を生細胞において経時的に観察することに成功したと考える。これらの穎粒の挙動は、大きく以下の2種に分かれた。(1)感染の進行により細胞がシャーレより離れるまで点状の穎粒のまま存在するもの。(2)感染の進行とともに大きな集合体となるもの。以上の2種である。(2)に関しては、大きな集合体とほぼ同様な場所にCellMaskの集積が観察された。GFP-M1発現細胞のインフルエンザウイルス感染では、穎粒状と繊維状のウイルス粒子の存在を確認しており、(1)が穎粒状(2)が繊維状ウイルス粒子の出芽過程に対応すると考えており、この仮説の元にさらなる解析を行っている。 上記の観察では細胞が極性を示さないサブコンフレントの状態で観察している。インフルエンザウイルスの生体での感染により近い、極性を持つ細胞での観察を行うために、Transwellのフィルター上で培養した細胞を用いアピカル側から観察する方法を検討した。その結果、固定した細胞での観察に、ほぼ成功した。生細胞に応用可能か検討中である。 さらに、蛍光色素標識抗体を用い、ウイルスHAタンパク質の感染生細胞表面での観察に成功した。今後HAとM1両タンパク質の感染細胞での挙動を、感染生細胞において同時観察する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最も重要な点である、生細胞においてのインフルエンザ出芽過程の観察に関しては、GFP-M1を用いた観察条件がほぼ樹立され、二波長同時観察に成功している。出芽過程に関与するタンパク質の挙動の差異を明らかにできるものと考えられる。一方、テトラシステインタグ導入M1タンパク質を用いた観察については、観察条件の確立が遅れている。蛍光標識の条件等さらなる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
GFP-M1を用い、2波長全反射顕微鏡観察により、インフルエンザウイルス出芽過程の解析をさらに進める予定である。既に、出芽過程への関与が仮定されている細胞内骨格系(アクチンおよびチュブリン)また、ウイルスタンパク質の細胞膜への輸送に関与するとされるRab11、さらに、ウイルスHAタンパク質に対する生細胞用蛍光プローブが作成済みである。これらのタンパク質の出芽場所での挙動の比較を行うことで、出芽過程の詳細な解析が可能と考えられる。極性を持つ細胞での観察に関しては、生細胞での観察は困難が予想される。少なくとも、固定細胞において上記タンパク質の蛍光像の比較を行い。極性の有無の影響を検討したい。テトラシステインタグ標識に関しては、24年度には観察が可能と考えている。
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