蛍光タグ付加インフルエンザウイルスM1タンパク質を用いウイルス出芽過程のライブセルイメージングを行うことが、本研究の主眼であった。GFP付加M1(GFP-M1)と全反射顕微鏡を用いることで、出芽過程に相当すると思われる顆粒構造の形成を観察できた。GFP-M1発現MDCK細胞にインフルエンザウイルスを感染させ、全反射顕微鏡で継時的に観察したところ、感染約8時間後からGFP-M1の顆粒状構造が観察されるようになった。その後、感染16時間程度で感染細胞は吸着ガラス面から遊離した。この間GFP-M1顆粒は細胞表面を動き回るとともに集積傾向を示した。観察された顆粒が出芽過程に対応するとすると、M1以外のウイルスタンパク質もそこに集積する必要がある。GFP-M1表面顆粒が観察される細胞を固定後、透過性処理を行い抗HA抗体で免疫蛍光染色を行った。全反射顕微鏡観察により、HA顆粒の集積と、それのGFP-M1との共局在が確認された。さらに、NPを免疫染色したところ、細胞表面顆粒は観察されず、細胞質内にのみ顆粒が観察された。NPの顆粒構造が確認されなかった原因として、GFP-M1が関与する出芽過程にはNPが参加しない。つまり、ヌクレオキャプシドを含まないウイルス粒子産生の可能性が考えられる。この点を検討するために、MDCK細胞にインフルエンザウイルスを接種し、11時間後、抗M1、HA、NP抗体で蛍光免疫染色した。HAに関してはGFP-M1細胞で観察されたと同様な顆粒の集積が細胞表面に観察された。一方、M1とNPのどちらもその集積場所への局在は観察されなかった。現在我々は以下の作業仮説従い研究を進めている。出芽過程あるいは成熟ウイルス粒子の蛍光免疫染色では、M1、NPの両タンパク質とも免疫染色され得ない様な構造にあるという仮説である。この点を明らかにすることは今後の研究遂行に必須と考えられる。
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