本課題では、ウイルス性脱髄の発症機序を解明することを最終ゴールとし、2つのウイルス非構成蛋白LとL^*による協調的な細胞死制御機序を解明することを計画した。 Lは、I型IFNの産生を抑制することから、免疫応答回避に不可欠な蛋白であると考えられているが、その一方で、強い細胞毒性を発揮することが知られている。そこで、申請者らは、BHK細胞にLを一過性に発現させ、Caspase-3 active form等をWestern blottingにより解析することで、L発現細胞ではアポトーシスが誘導されていることを明らかにした。さらに、共発現系による解析から、Lが誘導するアポトーシスはL^*により抑制されることを証明した【Okuwa et al. 2010. Microbiol. Immunol. 】。また、LはPuma/Noxaの発現を促進させることが海外のグループにより報告され、Lによるアポトーシスはintrinsic pathwayであることが示唆された。 一方、L^*の抗アポトーシス機序は、全く不明のままであったが、申請者らは、L^*にFLAG tagを付加した蛋白を用いてその紐砲内局在を解析し、L^*のミトコンドリア外膜への局在を初めて明らかにした。さらに、L^*の様々な断片にGFPを融合させた蛋白を用いた解析から、L^*は41-70残基の間にミトコンドリア移行シグナルを持つことが明らかとなり、さらにL^*は、分子内相互作用によりそのミトコンドリア局在を制御していることも示唆された【Himeda et al. 2011. Virus Res.】。 以上より、LとL^*による協調的な細胞死制御は、「LによるI型IFNの産生抑制と同時に起こるintrinsic pathwayの誘導を、L^*がミトコンドリア外膜において抑制する」ことによるものであることが示唆された。
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