研究課題
これまでに申請者らは、野外ブタ血清から強毒性の日本脳炎ウイルス(JEV)を分離し、さらにこの株の強毒性がJEV非構造蛋白質NS4A上の1アミノ酸の違いに起因することを突き止めた(論文投稿中)。これはフラビウイルスの病原性発現にNS4Aが関与することを示す最初の知見である。しかしその作用機序は全くわからない。NS4Aによる病原性誘導機構を解明するため、1)NS4Aが1型インターフェロン経路の活性化に干渉する、2)ウイルス感染時のアポトーシス誘導に関与するかを探る、3)NS4Aと相互作用するウイルス側および細胞側因子を探索する。これらの結果を踏まえ、強毒性を引き起こす1アミノ酸置換がNS4Aの性状・機能に及ぼす影響を調べ、さらにマウス個体を用いてin vivoで検証する。以上により、日本脳炎ウイルスNS4Aによる病原性誘導機構の解明を目指す。本年度申請者は、1型インターフェロン感受性細胞であるヒト肺がん由来A549細胞におけるNS4A蛋白1アミノ酸置換強毒型日本脳炎ウイルスの増殖性を調べてきた。結果としてインターフェロンβの有無に関わらず親株である中度毒性型日本脳炎ウイルスとの間に顕著な差異は確認されなかった(論文投稿中)。このことから、強毒性は1型インターフェロンとは無関係あるいは、in vivoなどより高次での解析でないと差異が検出できない可能性が考えられる。これらのことを踏まえ、次年度は動物への感染実験を行い、感染個体内でのウイルス動態ならびに宿主側の応答について解析を行なう予定である。
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