研究課題/領域番号 |
22590425
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
石井 克幸 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 主任研究官 (90342899)
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キーワード | ヒトパピローマウイルス / L2 / Trappc8 / エンドサイトーシス / エントリーレセプター |
研究概要 |
Trappc8蛋白質はヒトパピローマウイルス(HPV)51型、16型、31型のキャプシド蛋白質L2と共にpull-downされる。Trappc8ノックダウンHeLa細胞(HeLa-KD)はHPV51型、16型、31型の擬似ウイルス(PsV)に対して抵抗性を示す。また、Trappc8ノックダウンHaCat細胞はHPV31型authentic virionに対して抵抗性を示す。 当該年度はHeLa細胞におけるTrappc8の細胞内局在と、その結果から予想されるTrappc8の役割を調べた。HeLa細胞画分を調製しTrappc8の局在を調べた。Trappc8は少なくとも細胞質画分とミクロソーム画分に存在した。HeLa細胞表面のTrappc8をFACSと共焦点蛍光顕微鏡で観察した。Trappc8は細胞表面に存在し、少なくとも880-894アミノ酸領域は細胞表面に露出していた。HPV51型PsV接種で細胞表面のTrappc8は増加し、これはHPV51型PsVと共局在した。 HPV51型、16型、31型L2のN端とGFPの融合蛋白質(L2-GFPs)を精製し、L2-GFPsとHeLa細胞表面との結合をFACSで調べた。L2-GFPsはHeLa細胞表面に結合したが、HeLa-KD表面に結合しなかった。細胞表面のTrappc8はL2-GFPsと共にpull-downされた。また、精製Trappc8はL2-GFPsに親和性を示した。 HPV51型、16型、31型PsVはHeLa細胞表面に結合し、細胞内部に侵入した。HeLa-KDにおいて、これらPsVは細胞表面に結合したものの、細胞内部に侵入することはなかった。 以上の実験結果からTrappc8はHPVの細胞内部への侵入に必要な宿主蛋白質であり、未同定であるHPVのエントリーレセプターの有力な候補蛋白質であると結論付けられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Trappc8の精製が難しい。大腸菌で発現させた場合その量は少なく、不溶性である。不溶性のTrappc8を再構成して実験に使用しているが、満足な結果は得られていない。蛍光蛋白質融合Trappc8の安定発現細胞株が得られない。Trappc8の機能の詳細な解析(機能部位の特定や、抗体が得られない場合の細胞内局在の観測)ができない。
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今後の研究の推進方策 |
HPV感染におけるTrappc8の役割を詳細に解析する。具体的には、1)Trappc8とL2の結合をin vitroで測定する。Trappc8を可溶化した状態で精製する必要がある。MBP融合蛋白質システムを用いる。2)Trappc8の細胞表面と細胞内部の局在を詳細に観測する。Trappc8を標識するために、良質の抗Trappc8抗体が必要である。MBP融合システムで精製したTrappc8を免疫し、抗体を得る。3)Trappc8の機能に関わる領域を特定する。EF1-alphaをプロモータにしたTrappc8安定発現細胞株を作る。タグはペプチドにする。
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