HPVはTRAPPC8/KIAA1012に依存したエンドサイトーシス機構を利用し細胞内部へ侵入することが示唆された。この侵入にHPVのキャプシド蛋白質L2は必要とされない。従ってHPV感染におけるL2-TRAPP8 相互作用の意義は不明のままである。当該年度はHPV感染におけるL2-TRAPPC8相互作用の意義を調査した。また、TRAPPC8とオートファジーとの関連が論文で報告されている。HPV感染初期過程におけるオートファジーの誘導とその役割について調査した。 TRAPPC8をsiRNAでノックダウンするとゴルジ体は分散する。これと同様の現象がTRAPPC8と相互作用するL2、すなわち感染能のあるL2の発現で観測された。さらに、TRAPPC8と相互作用するL2のアミノ末端(N末端)ペプチドの細胞添加によりL1粒子の侵入が阻害された。L2はそのN末端の一部を除きL1キャプシドに埋もれた状態で存在し、細胞内侵入の過程で粒子表面に提示される。L2は細胞内に取り込まれた後、エンドソーム内腔からTRAPPC8の機能を阻害すると推測される。 HPV16型偽ウイルス(16PsV)をHeLa細胞へ接種するとLC3の集積が起こり、それは16PsVと共局在した。さらに、3-MAを細胞へ添加するとLC3と16PsVの共局在の比は減少し、16PsVによるトランスダクションは増加した。これらの事実は、HPV接種によりオートファジーが感染防御として誘導されることを示唆する。しかし、ラパマイシンの添加はLC3と16PsVの共局在や16PsVによるトランスダクションに影響を与えることはなかった。また、電子顕微鏡観察により16PsV粒子は隔離膜やオートファゴソームの内腔に存在することが判明した。これらはHPV接種によるオートファゴソームは飢餓応答のそれと異なる機構で誘導、形成される可能性を示唆する。
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