我々は、細胞内輸送への関与が示されている数種のRab蛋白質とそれらのエフェクター蛋白質に着目し、HIV-1の細胞内輸送システムの詳細を解明することを目的とし研究を行っている。具体的には対象をユビキタスに細胞に発現しているRab5、Rab7、Rab9、Rab11とそれらのエフェクター蛋白質に絞り、Rab蛋白質の恒常的ノックダウン細胞株を作製し、HIV-1粒子形成過程を中心にHIV-1複製過程への影響を検討している。また、Rab蛋白質変異体の過剰発現系においても同様にHIV-1粒子形成過程を中心にHIV-1複製過程への影響を検討している。 得られた研究成果は以下のようである。 1)HAタグを付与したRab11の野生型、ドミナントネガティブ(DN)変異体、恒常活性型(CA)変異体を293T細胞およびHeLa細胞において過剰発現させたところ、細胞中においてトランスフェクトしたpNL4-3のウイルス蛋白質の合成、放出ウイルス量、ウイルス粒子へのEnv蛋白質の取り込みに大きな影響は認められなかった。 2)しかしながら、293T細胞とHeLa細胞の両方において、DN変異体またはCA変異体を過剰発現させた細胞から放出されたウイルスの感染能が発現させた変異体の用量依存的に減少することが明らかになった。 3)Rab11蛋白質を恒常的にノックダウンした293T細胞にpNL4-3をトランスフェクトしてHIV-1粒子形成過程に対する影響を検討したところ、細胞中においてトランスフェクトしたpNL4-3のウイルス蛋白質の合成、放出ウイルス量、ウイルス粒子へのEnv蛋白質の取り込みに大きな影響は認められなかったが、放出されたウイルスの感染能がコントロール細胞のそれの約40%に減少していた。 以上の結果は、Rab11蛋白質がHIV-1の感染性ウイルス粒子形成に何らかの役割を演じていることを示唆している。
|