研究課題
Vpuによる細胞表面BST-2/tetherinのdown-regulationに関するメカニズムについては未だ明らかにされていない。これまでに我々は、Vpuがその膜貫通(transmembrane;TM)領域を介してBST-2とTM-to-TMによる相互作用を行っていることを明らかにし、更にVpuTMのみではBST-2には結合できるものの、抗BST-2活性を有しないことを明らかにしてきた。このことからVpuの抗BST-2活性には、TMのみならず、細胞質内(cytoplasmic tail;CT)領域も重要で、このCT領域に既知の宿主蛋白βTrCP以外の未知の宿主コファクターが相互作用してBST-2のdown-regulationに関与している可能性が考えられる。昨年の免疫沈降実験においてIgG heavy/light chain(55kDa、25kDa)付近に存在する候補蛋白を見過ごした可能性を考慮して、今年度はVpuにHaloTag^<TM>を付加させた発現ベクターを作製して抗体フリーの方法であるHaloLink^<TM>Resinを用いた沈降法によるcofactor検索を試みた。HaloTag付加型のβTrCP結合不全変異体(2/6)またはCT欠損変異体(ΔCT)Vpu発現ベクターを作製してHeLa細胞にトランスフェクトした後に免疫沈降反応を行ったが、Vpu結合蛋白の収量が不十分であった。その改良型として恒常発現系で行うべくレンチベクター版を作製し、293T細胞にトランスフェクトして大量調製したベクターウイルスを用いてHeLa細胞へのトランスダクションを行った。その後、細胞を溶解してHaloLink Resinを加えて免疫沈降反応を行った。免疫沈降物を精製して二次元電気泳動を行い、Cy3/Cy5染色によるスポット比較を2/6及びΔCTVpu間で行った。その結果、2/6Vpuにおいて有意に結合していると考えられる候補蛋白70種類ほどをピックアップした。現在ハイスループツト型MS解析により同定中である。したがって候補蛋白の同定に引き続いて行う予定であった、Vpuとの間接的あるいは直接的結合能の検討、Vpuとの共局在性の検討、または候補蛋白によるVpuのユビキチン化の検討、等の実験は次年度へ持ち越しとなった。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究計画では、Vpu結合蛋白候補が同定された後に機能解析へと展開していく予定であったが、スクリーニングが完了していないため、それらの実験は次年度へ持ち込しとなった。しかしながら、今回樹立した改良型実験系については、今後幅広い応用が可能であるという点において非常に満足いく結果となった。
今年度は、当初トランスフェクションによるVpu発現を試みていたがHeLa細胞における遺伝子導入効率に限界があり、Vpu結合蛋白のトータル収量が不十分であった。そのため、蛋白発現方法をトランスフェクションによる一過性発現系からレンチベクターによる恒常発現系にシフトすることでより多くのVpu結合蛋白を回収することを試みた結果、量的な問題を克服することができた。その一方でトラブルシューティングによる時間的なロスも大きかった為、残り一年間の研究期間で、当該研究計画を遂行すべく、候補蛋白が同定でき次第、全てのアッセイ系を同時進行させていくつもりである。
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