研究概要 |
本年度は、EBウイルス(EBV)感染マウスにおけるNK細胞の動態とインターフェロン産生を解析した。 EBV感染後1,2,5日目においてマウス末梢血中のCD16或いはCD56陽性でCD3陰性のNK細胞数を計測したが、EBV感染マウスと対照マウスの間で明確な差は認められなかった。また、感染後2日目にヒトIFN-αおよびIFN-βの末梢血中濃度を測定したが、やはり明確な差は認められなかった。そこで、感染後2日目のマウス脾臓から回収した単核細胞を短期間培養し、培養上清中のIFN-γ濃度を測定した。EBV感染マウス5頭の結果は平均24.1pg/ml、範囲16.0~34.5pg/ml、標準偏差6.7、対照マウス5頭では、平均17.1pg/ml、範囲7.5~27.0pg/ml、標準偏差8.6であった。P>0.5で有意性は認められなかったが、EBV感染マウスで高い傾向が認められたので、今後実験を繰り返し更に検証を進めたい。 次に、脾臓単核細胞のうちどの細胞が主にIFN-γを産生しているかを調べた。脾臓単核細胞から磁気ビーズ結合抗体によりCD56陽性細胞を除去した場合、ほぼ全てのマウスにおいてIFN-γ産生は検出感度以下に低下した。一方同じ方法によりCD8陽性細胞を除去した場合には、IFN-γ産生の低下は認められなかった。従って少なくとも一部分はNK細胞により産生されると考えられた。CD4陽性細胞除去の実験は現在進行中である。 ヒトのEBV感染は主に不顕性感染であるため、自然免疫応答が主役を演じる感染直後の1週間は見逃されてしまう。また優れた感染モデル動物も存在しなかったため、EBVに対する自然免疫応答はほとんど調べられてこなかった。従って、今回の感染モデルマウスにおける解析結果は画期的である。
|