研究概要 |
EBウイルス(EBV)感染ヒト化マウスモデルを用いて、EBVに対する自然免疫応答の解析と免疫細胞治療法の基礎実験を行った。 1.EBV感染後のインターフェロン産生の解析 EBV感染後12及び36時間後のマウス血漿を用いてヒトIFN-α及びIFN-βの濃度を測定したところ、感染前及びmock感染コントロールと比較して有意な差は認められなかった。 2.IL-15及びIL-15 receptor(IL-15R)投与によるM細胞の分化誘導 NOGマウスはNK細胞を完全に欠損しており、ヒト化した後のヒトNK細胞の分化は通常低レベルである。EBV感染直後のNK細胞の動態を解析するには十分なレベルのNK甑細胞の存在が必要であると考え、Di Santoらの方法によりNK細胞分化の誘導を試みた。臍帯血由来造血幹細胞を移植して血液免疫系を再構築したNOGマウスに、ヒトIL-15(2.5μg)及びヒトIL-15Rα-Fc(7.5μg)を腹腔内投与した。対照マウスにはPBSを投与した。実験群の3頭のマウス末梢血におけるCD16+CD56+NK細胞の頻度は投与前が0.5%,0.8%,0.75%であり、投与後は10.0%,16.6%,18.0%であった。対照群マウス2頭の投与後は0.0%,0.8%であった。これより、IL-15及びIL-15R投与により明らかにNK細胞の分化が促進された。現在、このようにしてNK細胞分化を促進したヒト化マウスにおいて、EBV感染後のNK細胞の動態及びIFN-γ産生を解析中である。 3.EBV関連疾患に対する免疫細胞治療の基礎実験 当初は、EBV遺伝子を導入した樹状細胞を用いてヒト化マウスに免疫応答を誘導する実験を行う計画であったが、これを変更して、EBVによるリンパ増殖性疾患を発症したヒト化マウスに対する自己活性化T細胞輸注の治療実験を行うこととした。今年度は、臍帯血からの活性化T細胞の調製法について検討したのち、3頭に対するパイロット実験を行った。その結果、活性化T細胞輸注を受けたマウスでは主要臓器におけるEBV DNA量が減少することが示唆された。現在、マウスの個体数を増やし生存期間に対する効果と併せて検証中である。
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