研究概要 |
IL-21はIL-6やIL-23と共にTh17細胞分化増殖に関与しているが、IL-21の情報伝達系の全容はまだ明らかになってはいない。私達はIL-21情報伝達に関わる分子の検索を行い、IL-21が多機能蛋白Ape1/Ref-1の発現を誘導することを見いだした。Ape1/Ref-1の機能解析を行った結果、Ape1/Ref-1はIL-21情報伝達の中でもERK1/2を介する経路に必須な役割を担っていた。すなわち、shRNAによりApe1/Ref-1をノックダウンした細胞株では、IL-21によるERK1/2活性化が著しく減少するとともに、IL-21依存性細胞増殖能が失われることを報告した(Biochem Biophys Res Commun 420,628-634,2012)。さらにApe1/Ref-1のレドックス活性を阻害する試薬E3330を前処理しても、IL-21依存性のERK1/2の活性化が低下した。 次にApe1/Ref-1のヘルパーT細胞の活性化や分化におよぼす影響を検討するため、E3330存在下にT細胞を活性化したところ、IFN-γ産生細胞数が上昇した。その際のTh17細胞への影響について解析を進めている。 一方IL-21の生体内での機能を解析するために、私達が発見したIL-21アイソフォームをTリンパ球特異的に発現するマウスを樹立した。このマウスにDSSを投与し、腸炎を発症させた結果、野生型マウスと比べて明らかに大腸炎の症状が悪化し、Th17細胞など炎症性細胞が強く誘導されていた(Cytokine 62,262-271,2013)。現在このマウス大腸炎発症系に対してE3330を投与し、in vivoでのApe1/Ref-1の機能を解析している。
|