研究概要 |
ヒト形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cells ; pDC)は、核酸認識Toll様受容体(Toll-like receptor ; TLR)7,9を介して自己の核酸に反応しインターフェロン(IFN)-αを産生することにより、全身性エリテマトーデスや尋常性乾癬といった自己免疫疾患・炎症性疾患の発症に関わることが示されている。したがって、pDCからのIFN-α産生を抑制する因子がこれらの疾患の治療薬になり得る。22年度は、多発性骨髄腫の新規治療薬であるプロテアソーム阻害薬ボルテゾミブがpDCの生存・機能に及ぼす影響を検討した。 ボルテゾミブは他の免疫担当細胞に比べ、pDCのアポトーシスを強く誘導した。この作用は、小胞体ストレスを回避する転写因子XBP-1の活性化を阻害することによると考えられた。また、ボルテゾミブは、CpG DNA及びインフルエンザウイルスによるTLR9,TLR7を介した刺激で誘導されるIFN-αとIL-6め産生を、アポトーシスに依存しない機構で抑制した。この作用は、TLR9の小胞体からエンドソームへの移動を抑制することによると考えられた。この移動の際に、小胞体の膜タンパクUNC93B1がTLRに結合し、これを運搬するが、UNC93B1の移動はポルテゾミブにより影響を受けなかったことから、ボルテゾミブはTLR9とUNC93B1の結合を阻害することが示唆された。 以上より、ボルテゾミブは、(1)核酸認識TLRとUNC93B1の結合を阻害して、TLRの小胞体からエンドソームへの移動を抑制することによりpDCの機能を阻害し、(2)小胞体ストレスに対する恒常性維持を阻害することによりpDCのアポトーシスを誘導すると考えられる。本研究は、プロテアソーム阻害薬が、pDC由来のIFN-αが関与する自己免疫性・炎症性疾患の治療薬となる可能性を示す。
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