研究課題/領域番号 |
22590434
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
門脇 則光 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60324620)
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キーワード | 自然免疫 / 樹状細胞 / 細胞内小胞 / 免疫制御 |
研究概要 |
ヒト形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cells; pDC)は、核酸認識Toll様受容体(Toll-like receptor ; TLR)7, 9を介して自己の核酸に反応しインターフェロン(IFN)-αを産生することにより、全身性エリテマトーデスや尋常性乾癬といった自己免疫疾患・炎症性疾患の発症に関わることが示されている。したがって、pDCからのIFN-α産生を抑制する因子がこれらの疾患の治療薬になり得る。23年度は、慢性骨髄性白血病の分子標的薬であるチロシンキナーゼ阻害薬ダサチニブがpDCの生存・機能に及ぼす影響を検討した。 ダサチニブはpDCの細胞死を誘導することなく、CpG-A(pDC の早期エンドソームに滞留しIFN-α産生を誘導するCpG DNA)刺激を受けたpDCによるIFN-α産生を抑制した。一方、他のチロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブ、ニロチニブにそのような作用は見られなかった。ダサチニブ服用患者の末梢血pDCにおけるIFN-α産生能が服用開始とともに抑制されたことから、ダサチニブの作用はin vitroのみならずin vivoでも見られることが明らかになった。また、ダサチニブはCpG-B(pDC の早期エンドソームに滞留せずTNF産生を誘導するCpG DNA)刺激を受けたpDCによるTNF産生は抑制しなかった。さらに、CpG DNAを受けたpDCにおける蛋白のチロシンリン酸化は、TLR9以下のシグナルを阻害するクロロキンで阻害されなかったが、ダサチニブでは阻害された。 以上より、ダサチニブは、CpG-A 刺激を受けたpDC において、CpG-A がTLR9に会合する前の上流に作用することにより、IFN-α産生を阻害すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダサチニブがpDCによるIFN-α産生を阻害し、その作用点がTLR9の上流にあることを見いだした。これにより、ダサチニブによるpDC機能抑制の機序を解析する手がかりを得た。
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今後の研究の推進方策 |
ダサチニブがpDCによるIFN-α産生を阻害する際の作用点を、共焦点顕微鏡による観察およびリン酸化プロテオミクス解析によって明らかにする。
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