IL-27および関連サイトカインIL-35はIL-12サイトカインファミリーに属し、免疫抑制作用を持つことが知られている。本研究では、以下の3点を明らかにすることを目指した。1)IL-27、および関連サイトカインIL-35が自然免疫細胞に及ぼす抑制効果を検討する。特に、樹状細胞やマクロファージなどの機能に与える影響を明らかにする。2)IL-27のサイトカイン産生抑制機構・細胞機能抑制機構を解明する。T細胞系と自然免疫系に分けて、それぞれに共通な機構と独自な機構との存在を明らかにする。3)試験管内およびマウスモデルにおいてIL-27およびIL-35シグナルを制御することによる免疫・炎症疾患に対する治療効果を検討する。 1)2)に関しては、丁細胞においてIL-27の下流でIL-10産生に関わる転写因子に着目し、この機能を解析している。T細胞とマクロファージなどではIL-10産生誘導機構がことなる可能性を見いだしている。3)に関して、炎症性動脈硬化、炎症性2型糖尿病モデルマウスにおいてIL-27による炎症抑制効果を見いだしており、糖尿病モデルマウスでは、IL-27による糖尿病発症抑制効果を確認した。これらの解析を通じて、(1)自然免疫~獲得免疫におよぶ、IL-27の細胞機能抑制効果の分子機構の解明、(2)いわゆる免疫疾患のみならず、膵島炎や動脈硬化など、炎症により引き起こされる病態におけるIL-27の免疫・免疫制御作用や、病態形成における役割が明らかにされ、(3)IL-27シグナルコントロールによる、ヒトの炎症性疾患に対する治療応用の可能性を視野に入れた新規免疫抑制法の確立が期待される。
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