IL-27は、免疫・炎症抑制作用を持つIL-12ファミリーサイトカインである。本研究では、申請期間の3年間に以下の3点の解析を行った。1) IL-27が自然免疫細胞に及ぼす抑制効果を検討する。2) IL-27のサイトカイン産生抑制機構・細胞機能抑制機構を解明する。3) 試験管内およびマウスモデルにおいてIL-27シグナルを制御することによる免疫・炎症疾患に対する治療効果を検討する。これらの解析を通じて、IL-27を主とする免疫抑制性IL-12関連サイトカインが自然免疫細胞、およびT細胞に及ぼす影響を解析した上で、自然・獲得免疫を増強・抑制することによる疾患の治療効果を検討した。 本年度は以下の検討を行った。1.樹状細胞・マクロファージ、およびその他の自然免疫細胞に対するIL-27の効果。2.個体内におけるIL-27の自然免疫細胞に対する効果。3.IL-27の抑制性シグナルの解明。これらの中で、IL-27刺激がマクロファージなどにおいて、脂質メディエーター関連遺伝子の発現を制御することを見出した。これは、IL-27による全く新しい免疫反応・細胞分化制御機構の存在を示唆しており、今後の詳細な解析が待たれる。また、変成自己、変成成分により生じる炎症病態におけるIL-27の関与と、IL-27の持つ炎症病態に対する治療効果を明らかにした。すなわち、IL-27シグナルを欠損するマウスでは炎症の増悪が認められ、これらが糖尿病や動脈硬化の進展に関与することをマウスモデルで明らかにした。これらから、IL-27が炎症に伴う病態形成をさまざまなメカニズムで負に制御していることを明らかにし、IL-27を標的とした新規治療法・新規創薬の開発を視野に入れた基盤的データが得られた。
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