研究課題/領域番号 |
22590436
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
前田 和彦 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (20332869)
|
キーワード | 免疫学 / ゲノム / 遺伝子 |
研究概要 |
成熟B細胞における抗体の多様性獲得には活性型脱アミノ化酵素(AID)による遺伝子変異導入の分子経路が必須である。しかしながら、細胞質に優位に存在するAIDが核移行して、どのようにして免疫グロブリン(Ig)遺伝子座へと正確に誘導されていくのかについては明らかではない。本研究では、同じく胚中心B細胞で高発現するGANPが、AIDの標的DNAにアクセスする分子機構を明らかにすることによって抗体遺伝子の多様性・親和性獲得の解明を行なう。本年度は、さらにGANP複合体を調べるため、ヒトRamos B細胞株から抽出した核蛋白と抗GANP抗体を用いてプロテオミクスを行なった。その結果、ヒストン蛋白及び種々のRNA輸送・代謝関連分子群を同定した。個別分子の検証を進め、GANPがクロマチン分画に安定的に存在すること、GANPのHATドメインがヌクレオソームの配置と安定性維持に関連することが明らかになった。GANP複合体によるIg遺伝子座選択的アクセスが、AIDの標的DNAアクセスに関連することが示唆された。また、GANPが認識する標的RNAと標的DNAを調べるため、GANPのRNA認識モチーフ(RRM)に着目した。Ig遺伝子のmRNA輸送を理解するため、確立されているHIV-1 mRNA輸送システムを用いて検討したところ、以外にもHIV-1 mRNAがGANPの標的RNAの一つであることが明らかとなった。この成果から、GANPのRNA認識及び選択的結合性を示すRNAが飛躍的に選定することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的を達成するため、研究計画に基づいて堅実に遂行したところ、予想以上の研究成果をあげることができた。現在までの成果は、仮説の検証が堅実に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、GANPのハイパーミューテーションを理解する上で、AIDの標的DNAアクセスの分子経路の解明が重要である。世界では、AID研究に携わる40程度のグループが多角な方面から異分野研究者とともに全面的に取り組んでいる重要課題である。しかしながら国内ではごく限られたところでの取り組みとなり、その推進力の差は年々大きくなりつつある。堅実な研究推進とともに、ゲノムワイド解析の基盤整備と活用が望まれる。
|