研究課題/領域番号 |
22590439
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
松田 達志 関西医科大学, 医学部, 准教授 (00286444)
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キーワード | 樹状細胞 / mTOR / IL-10 / Raptor / 免疫制御 / サイトカイン |
研究概要 |
IL-10は、自己免疫反応の抑制など免疫応答の閾値を制御する重要なサイトカインであるが、その産生機構には不明な点が多い。研究代表者らは、mTOR経路が樹状細胞特異的にIL-10の遺伝子発現制御を行っていることを世界に先駆けて明らかにしており、本研究を通して、mTOR経路によるIL-10の遺伝子発現調節機構の分子レベルでの解明を目指すとともに、樹状細胞mTOR経路を標的とした個体レベルでの免疫応答制御の可能性の検証を行っている。 昨年度までの解析から、樹状細胞におけるIL-10発現制御には、mTORC1-4EBP経路を介したeIF4Eの活性化が必須であることが明らかとなっている。そこで、eIF4Eによって翻訳調節を受ける転写調節因子がIL-10の遺伝子発現に関与しているとの作業仮説の下、IL-10遺伝子の転写開始点から上流1kbpにおよぶプロモータ領域を対象に網羅的なEMSAを行い、mTORC1-4EBP-eIF4E経路によって制御を受ける領域の絞り込みを行った。しかし、eIF4E特異的な阻害剤の有無で結合が変化する領域を見出すことはできず、mTORC1-4EBP。eIF4E経路の標的分子は、プロモータ領域以外に種間で保存されている非翻訳領域(いわゆるCNS)に結合することでIL-10遺伝子の発現制御を行っている可能性が強く示唆された。実際、データベース上の解析から種間で高度に保存された領域が2箇所見つかったため、現在、その領域を対象とした網羅的EMSAを試みている。 並行して、mTORC1経路のシグナル伝達に必須なRaptorを樹状細胞特異的に欠失するマウス(Raptor-fl/fl xCD11c-Creマウス)を樹立し、腸管樹状細胞におけるmTORC1シグナルの低下が、IL-10産生能の低下ならびにDSS誘導性大腸炎の増悪化を引き起こすことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹状細胞特異的mTORC1シグナル欠失マウスの樹立に世界に先駆けて成功し、そのマウスを用いることで、mTORC1シグナルとIL-10の関係を個体レベルで明らかにできた点は、研究の成果として十分に評価されうるものと考える。一方で、mToRC1シグナルによるIL-10発現調節の分子機構解明の課題は、当初想定したプロモータ領域に標的領域が見つからなかったため、対象領域を拡大しての再検討を余儀なくされているから。
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今後の研究の推進方策 |
mTORC1-4EBP-eIF4E経路によるIL-10発現制御の分子機構解の詳細を明らかにするとともに、樹状細胞特異的mTORC1シグナル欠失マウスにおける免疫応答の質的・量的変化の有無を明らかにする。
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