研究概要 |
高内皮細静脈(high endothelial venule : HEV)はリンパ球のリンパ節へのホーミングを支配する特異な小静脈である。HEVを構成する特徴的な血管内皮細胞である高内皮細胞は末梢組織の自然免疫情報の投射を受け、免疫細胞のリンパ節への動員をダイナミックに制御して自然免疫と獲得免疫を機能的に連結する役割をもつ。血管内皮細胞による自然免疫情報の受容機構と免疫細胞の動態制御機構を明らかにすることを目的に、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を種々のサイトカイン(12種)やTLRリガンド(8種)で刺激し、細胞接着分子・ケモカインなどの発現の変動を解析した。その結果、刺激応答性の発現変化が明らかなケモカイン(CCL5,CXCL10およびCCL26)および細胞接着分子(E-selectin, P-selectin, ICAM-1,およびVCAM-1)が特定された。Th1サイトカインであるINFγによってCXCL10が、Th2サイトカインであるIL-4およびIL-13によってCCL26が誘導されるなど局所で進行する免疫反応に呼応する細胞動員分子の発現が認められたが、今回用いた刺激条件では高内皮細胞に特異的な細胞接着分子MAdCAM-1やケモカインCCL21およびCXCLl3などの発現は検出されなかった。一方、TLR3リガンドであるpolyI : cはHUVECに作用して細胞接着分子(E-selectin, ICAM-1, VCAM-1)およびケモカイン(CCL5およびCX3CL1)の発現を強く誘導した。この結果は血管内皮細胞が局所で産生されるサイトカインに応答するばかりでなく、PAMPs/DAMPsをdanger signalとして直接感知して免疫細胞の動員を制御することを示唆している。今後、血管内皮細胞による局所のサイトカインシグナルとdanger signalの統合による細胞動員制御機構などについてさらに解析を進める必要があると考えられた。
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